迷い猫オーバーラン 松 智洋
都築乙女は、非常識なほど人を助けたがる。たとえば、ヤクザに追われた家族だとか、温暖化で沈みそうな南の島だとか・・・本当にそれらを救うために有言実行してしまう。
そんな乙女は喫茶店「ストレイトキャッツ」のパティシエール。もちろん、その店の名の通り、乙女が拾ってきた捨て猫がたくさん(15匹)もいる。
ある日、乙女はまた何かを拾ってきた。それは、捨て猫ではなく、人間の女の子だった。
非常にハイテンションで繰り広げられる物語は痛快。
小ネタも多く、知っている人は思わずニヤリとしてしまう描写が多く盛り込まれている。
もっとも、描写は巧いとは言いがたい上に構成も優れているとは言いがたい。個性的なキャラとハイテンションですべて乗り切る作品だと思って読んでいただきたい。
以後ネタバレ
正直、読むのに疲れた。
上記に書いた小ネタだけれど、昔から今にいたるまで・・・特に最近のものが多く、著作権的にどうなのよ?と思わなくもない。
というか、作者の独創性がまったく感じられない作品。
キャラクター小説のくせに、どのキャラも既存のキャラを超えられていない。
文乃は、とらドラの大河以下。特に凶暴性の理由が貧弱であり、ただ暴力を振るっているだけで見るに苦痛。評価する点としては、正直じゃない=言っていることがすべて嘘。という設定のみ。
希は、作中で家康が言っているように、エヴァのレイそのまま。評価する点さえもない。クライマックスの家での理由でさえもよく分からない貧弱さ加減。
主人公の巧みにいたっては、エロゲの主人公を混ぜて混ぜて混ぜすぎて、まったく無個性。
その他脇役もどーでもいい感じ。
ストーリーも正直内も同然。乙女が希を拾ってきた⇒楽しい日々⇒でも、希は自分がいると迷惑と感じる(理由不明)⇒逃げる⇒捕まえる⇒ハッピーエンド。どうしよう、数行で物語を語りつくせるこの薄さ。
しかもオチは孤児院ネタ。使い古されすぎですよ?
続巻は・・・古本で100円なら買ってもいいかな・・・。
LAST KISS 佐藤 ケイ
ずっと入院していた妹が、夏休みの間だけ退院することになり、井崎は夏休み中、妹と過ごすことになる。
無口で苦手だった妹と親の命令とはいえ面と向かって接することによって、その苦手意識は徐々に払拭されていく。
妹の由香もそんな兄に対して好意的な印象を抱いていく。
そんなある日の朝、由香が吐血してしまい、入院生活に逆戻りしてしまう。そして、井崎は両親から由香の命が残りわずかだという事実を知ることになる。
出だしから、お涙頂戴な雰囲気満載です。
珍しく関西弁の一人称。新鮮でした。
内容としては、セカチューの妹バージョンといった感じ。
ラストが分かりながらも、ラストが気になって読むスピードがどんどん速くなる構成、文章は秀逸。
延命せず、やりたいことをやって死ぬか、かすかな希望にすがり、やりたいことをやらず安静にして過ごすし緩慢に迫る死を待つか。
ちょっと考えさせられる作品です。
以後ネタバレ
なかなかどうして、王道のピュアストーリー。
三角関係。
女の子の複雑な思い。
なかなかうまく書かれていると思います。
ただ・・・起伏がない。
淡々としたイメージです。盛り上がらないし、盛り下がらない。
なのぜ、全キャラとも薄いですし、話そのものも透明な感じ。
綺麗なんですけどね・・・。
白血病の由香。稀な骨髄なんたらのため、適合するドナーが現れる確立は低い。
ラストシーン。安静にして少しでも延命し、かすかな希望である適合のドナーが現れるのを待つか、死期は早めるけれどもやりたいことをやって少しでも未練を少なくして死ぬか。
由香は後者を選んだ。
兄との最後のデート。そして、最初で最後のキス。
そして、死。
その直後、ドナーが見つかる。
あの時、安静にしている道を選べば、由香はもっと兄とデートができるようになったかもしれない。でも、あの時点ではドナーが現れるかどうかなんて分からなかった。むしろ、現れない可能性のほうが多かった。
もし・・・
それを考えさせられる作品です。
そして、妹が死んでも井崎の日常は続くわけで・・・。
さらに夏尾ともいい感じになってるし。
とてもリアルで、とてもシュールな終わり方でした。
妹がかわいそう・・・><