きみが見つける物語-放課後編- 浅田次郎・石田衣良・橋本紡・星新一・宮部みゆき  陽輔

 ★3

 いま旬な作家・作品を厳選した短編小説アンソロジー
 食べず嫌いさんにもぜひひとくち味わってほしい、質は保証付き
 短くてもとびきり味わい深い極上のアソートボックス。
 -角川書店-

 十代のために紹介される短編集。角川にしか出来ないような豪華すぎる短編集です。
 一人一人のご紹介をするだけで、凄い量の文章を消費しそうなので、良かった作品を三つほどあげて書評しようかな。
 名前だけは知っているのに、手を伸ばさなかった作家さんとも気軽に出会えるような今作。
 しばらく長編小説ばかり読んでいた俺には、手軽に楽しめる染みるような一冊でした。

 全四巻発売されており、今回の本では、放課後編って事で収録されております。
 放課後編って言われてもなー。別に全員学校縛りでやってる訳でもないので、まぁ、そこらへんは置き。


 橋本紡「地獄の詰まった箱」。

 彼はどうにも、優しい物語を書く作家さんみたいですね。
 半分の月がのぼる空、くらいしか読んだ事は無かったのですが。
 (現実というのは『だるまさんがころんだ』に似てる。どんなに気をつけていても、早く唱えても、だんだん近づいてくる。そして、こっちがびっくりする間もなく、現実は背後に立っている)
 迂遠な表現は避け、素直な言葉で、地獄や辛い現実を象徴する。
 十代に一番向いている作家さんかもしれませんね。


 星新一「門のある家」

 大人の絵本。ショートショートの神様。やはり完成度で行くならば、圧倒的。
 圧倒的という言葉を使うのは少し違う気がする。んー他の作家さんの短編というのが、大きな世界の物語の一部を切り取って書いている物だと例えると、星新一さんの短編というのは作品は、その一つで完成しているように思う。
 余計な説明を省き、要点を言葉にしていく。
 そして、一歩物語に踏み込むと、それはまるで何かを象徴しているように思える。
 すっきりと気持ちのよい終わり。
 そんなイメージがある。

 彼の文章の引用は控えたい。ネタバレとかもね。それが全てな作家さんの気もするから。
 ライトノベルではキノの旅が近い手法だなぁ、と思っている。
 あれ、これは星さんの紹介であって、お話の紹介じゃないやん。


 浅田次郎「雛の花」

 主人公が過去を回想する事で始まる今作。語り部である所の主人公の祖母が物語の中心になっている。
 鉄火な姉御肌。主人公の母と一緒に歩いていても姉妹に間違われるほどの美しい祖母。
 両切り煙草を、伝法に吹かす祖母。
 豪快なキャラクターと、その半生をちらりと覗き見るような短編。

 うんうん。やっぱり浅田さんはエンターテイナーだなーと思う。起承転結の盛り上げ。
 立ったキャラクター。そして締めの美しさ。
 洗練された軸の強さを感じる事が出来ます。


 まぁ、そんな感じでご紹介しましたが、どうにもこうにも、もう少し自分って物を交えながら今度は書評を書いてみたいね。この本の悪い所を上げるとするなら、別に十代に小説導入に読ませるにしては、そこまでの名作ってもんじゃない気がする。一人一人がそれぞれの持ち味があるのに、一番良い所を見せきっていない気がする。
 俺みたいな、長編読むの疲れたー。お、有名作家勢揃い? おっしゃー気楽に読もう!
 みたいな人にはすごく良い短編だったと思います。

 ではでは。